「非」全力疾走論
今回は私の野球観についての話題です。
多くのチームでは、チームの決め事として、「全力プレー」を奨励(徹底)しているのではないでしょうか?
特に走塁の全力疾走については、以下のように厳しく言われる傾向にあります。
・一塁駆け抜けのとき、ベースを踏む直前にスピードをゆるめると叱られる。
・フライが上がったあと二塁まで走らせる。
・打球を見ずにベースだけを見て走らせる。(コーチャーの指示)
・攻守交代もとにかく全力疾走。
・グラウンドに入ったら歩いての移動は許されない。
などなどです。これのどこが悪いのか、やって当たり前じゃないか、という意見もわかります。
そして強豪校などでは、それを「当たり前」として実践していますよね。
そんなことを何かの情報で聞いた若手指導者は、チーム作りの根幹にそれを掲げ日々と部活動の指導にいそしみます。
確かに全力プレーをすることによるメリットもあります。
しかし、野球は、全力でやったほうが勝ち、というスポーツではありません。
野球で大切なのは、「眼で見た情報をもとに最適に体を動かすこと」です。
例えば、内野ゴロ一塁駆け抜けにしても、打った後に脇目もふらず一塁に全力で走るのと、打球を見て走るのでは、見ながら走った方が相手のエラーなどにもすぐ気づき、駆け抜けからオーバーランにつなげやすいし、送球が自分の方にそれた場合でも、見ていて方向転換できる余裕を持っていればスライディングしてかわしたり、衝突を避けることにもなり、ケガも防げます。
「全力」を、過剰に意識させすぎると、力みを誘発し、また注意力を欠いてケガにもつながってしまうのではないかと感じます。
特に、誰よりも一生懸命やるけど、技術レベルに課題があるプレーヤーは、そこばかりに注意を向けてしまう傾向もあります。
全力プレーを心がけることだけで勝てるほど、野球は甘くありません。
確かな技術、より良い体の使い方、強い体作り、正しい考え方。
それが備わっていけば、自然とその時その時にベストを尽くすプレーヤーになっていくんではないでしょうか?
指導者に言われなくても、自分に必要なことを考え 、必要なものを取り入れ、プレーを楽しむ。自然と声を出したり、真剣にプレーする。そんなプレーヤーやチームを育てたいですね。